Short Story Nap ―2―「さんぞおぉ~っ!」上目遣いで、睨む桃花。「・・・離せ、バカ女。」歯牙にもかけない三蔵。 卵焼きの上で、絡まった箸が、プルプル震える。 『コレは困りましたね・・・。』秘かにため息をつく。 まさか三蔵と桃花の間で、“卵焼き戦争”が勃発するとは八戒にも予想外だった。 悟浄と悟空も固唾を呑んで見守っている。 「女の子に譲ろうって気は無いの?」ウフッと笑ってみせる。 「生憎、テメーが女に見えないんでな・・。」此方もクッと笑う。 ゴゴゴゴゴゴッッッッ・・・二人の間に炎が渦巻く―――様に見える。 「ごっ、悟浄・・どっちが勝つと思う?」 「判んねーよっ・・にしても恐いって・・・。」ヒソヒソ話す二人。 「・・・あのー、ジープが怯えるので・・・・。」 「キュー・・。」 八戒とジープの声も届かない。 (かなり)違う意味で、二人の世界が構築されつつある。 桃花がフッと息を吐いた。 「しょうがないな・・食べるのは諦めてあげるっ。」 ピクッと三蔵の手が反応した。 「・・・お箸で食べるのはねっ!」言い終わらないうちに、さっと左手で卵焼きを 掴み、自分の口に放り込んだ。 「~あーおいひっ♪♪」満足げな桃花の顔。キュッキュッとハンカチで手を拭う。 スパアアァーンッ!!・・・当然のごとく、ハリセンがお見舞いされた。 「いいっ痛い~っ!ちょっと、三蔵!大人げないわよっ!?」 「てめぇの方が年上だろうがっ!この役立たずっ!!」 「うわーんっ!八戒ちゃーん、三蔵があんな事言う~っ!!」 「てめぇ!八戒に縋(すが)ってンじゃねぇ!!」 それに悟浄と悟空も参加して・・・・大騒ぎのランチになってしまった。 『たまには・・・ゆっくり食事したいんですけどねぇ?』 そう思いつつ、 “楽しいですけど” と、付け加えた。 |